子どもに任せて、感謝の気持ちを伝える育て方

親として、子どもの成長を見守るのは大きな喜びであり、同時に責任も感じるものです。
特に、子どもの自己肯定感を高めることは、学力や将来の成功に重要な影響を与える要素の一つです。
自己肯定感が高い子どもは、自分に自信を持ち、他人と協力しながら問題を解決する力を養っていきます。
しかし、自己肯定感を育むためには、日常の中での小さな経験や成功体験が不可欠です。
その一つが、家庭内での「お手伝い」です。
子どもに家事を任せることは、単なる手間の省略ではなく、子どもが誰かの役に立っているという感覚を育てる大切な機会です。
多くの親が忙しさに追われ、子どもに手伝わせるよりも自分でやった方が早いと感じてしまいがちですが、この小さな「任せる」行動が、自己肯定感の土台を作る重要なステップとなります。
この記事では、まず「自己肯定感」が子どもの成長にどのように影響するのかを探り、その後、家事を通じて自己肯定感を高める方法について考えていきます。
さらに、具体的にどのような家事を子どもに任せるべきか、また、どのような声掛けが子どもの自己肯定感を支えるのかを具体例を交えて紹介します。
自己肯定感と学力の関係
「自己肯定感」という言葉は、子育てに関心を持つ親なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。
自己肯定感とは、自分自身に対して価値や信頼を感じる感覚のことです。
子どもたちが毎日の生活の中で、どのような経験を積み、どんな声掛けをされるかによって、この感覚は大きく左右されます。
自己肯定感が高い子どもは、自分に自信を持ち、自ら進んで物事に取り組む姿勢を見せます。
たとえば、宿題をやるように言われる前に自ら始めたり、新しいことにも積極的に挑戦することができるでしょう。
さらに、自己肯定感が高い子どもは、他の人の意見を柔軟に受け入れることができ、他者と協力しながら問題を解決する力も高まります。
学習においても、わからないことがあっても「次はどうすればうまくできるか」と前向きに考える傾向があります。
一方で、自己肯定感が低い子どもは、自分に自信を持つことができず、受け身で消極的な態度を取りがちです。
例えば、テストで悪い点を取った時、自己肯定感が低い子どもは「どうせ自分にはできない」とあきらめてしまい、次の挑戦を避けるようになります。
また、他の人の意見を聞き入れることが難しく、自分のミスを他人のせいにしてしまうこともあります。
このような消極的な態度は、学力や学習態度にも影響を及ぼすことがあります。
学力向上には、知識やスキルをただ身につけるだけでは不十分です。
勉強に対する積極的な姿勢や、失敗を恐れずに挑戦する意欲が欠かせません。
自己肯定感が高い子どもは、自ら目標を立てて挑戦し続けることができるため、学力も自然と伸びていきます。
一方で、自己肯定感が低いと、失敗に対する恐れから学習そのものに対するモチベーションが下がってしまい、結果として学力にも差が出てくるのです。
自己肯定感を高めるためには、家庭での小さな成功体験や、親からの適切なフィードバックが重要です。
「よくできたね」「すごいね」といった褒め言葉も効果的ですが、それ以上に「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉が、子どもにとっては大きな励みになります。
感謝されることで、子どもは自分が家族や周りの人々にとって必要な存在であると感じ、自信を深めることができます。
また、失敗をしてしまった時にも、その経験を前向きに受け止めることができるような声掛けが大切です。
「失敗しても次に生かせばいいよ」「どうすればうまくいくか考えてみよう」といった言葉は、子どもが失敗を恐れずに挑戦する意欲を持つための助けとなります。
学力を高めるためには、こうした自己肯定感を支える日常の積み重ねが欠かせません。
お手伝いが自己肯定感を高める理由
子どもの自己肯定感を育てるためには、さまざまな方法がありますが、その中でも特に効果的なのが「お手伝い」です。
内閣府が発表した令和元年版『子供・若者白書』によると、自己肯定感の低さの背景には「自己有用感の低さ」が影響していると指摘されています。
自己有用感とは、「自分が誰かの役に立っている」という感覚で、この感覚がしっかりと育まれることが、自己肯定感を高める鍵となります。
しかし、現代の子どもたちは、親の忙しさや自分自身の習い事や勉強でスケジュールが埋まっていることが多く、家庭内で誰かの役に立つ経験を積む機会が減少しています。
親も忙しい毎日の中で、子どもにお手伝いをさせるよりも、親自身がさっと家事を片付けた方が早いと感じることが多いでしょう。
しかし、これでは子どもが自分の役割や存在意義を感じる機会を失ってしまいます。
だからこそ、意識的に子どもにお手伝いを任せ、家庭内での役割を与えることが重要です。
お手伝いは、単に家事を手伝ってもらうだけではなく、子どもが「自分は家族のために役に立っている」という実感を得られる貴重な経験になります。
たとえば、簡単な料理の準備や食器の片付け、掃除など、子どもでもできる家事を任せることで、子どもは成功体験を積み、家族の一員として自分が必要な存在であると感じるようになります。
短期的には、子どもにお手伝いを頼むことで、親の負担が増えるように感じることもあるかもしれません。
最初は教えながら一緒に行う必要があるため、時間がかかることもあります。
しかし、長期的な視点で見れば、これは非常に価値のある投資です。
子どもが自ら家事をこなし、自信を持って行動できるようになるまでの過程で、親子のコミュニケーションが増え、信頼関係も深まります。
さらに、お手伝いを通じて自分の役割を果たした子どもは、家庭の中で自分が重要な存在であると感じるようになります。
この感覚が強まることで、家族との関係だけでなく、友達や学校など、他の社会的なつながりに対しても積極的に関わるようになり、社会性が育まれていきます。
お手伝いを通じて得た自己肯定感は、家庭内だけにとどまらず、学校生活や友人関係にもポジティブな影響を与えます。
例えば、学校でのグループ活動やクラブ活動などにおいて、自分の意見を積極的に述べたり、他の子どもたちと協力して課題を解決する姿勢が育まれるのです。
これは、将来的に社会で活躍するための基盤となります。
子どもに任せる家事とは
子どもに任せることのできる家事はたくさんあります。
主な家事として掃除、洗濯、料理が浮かびますが、実は家事の約8割は「名もなき家事」と呼ばれているものです。
大和ハウス工業がまとめた「『名もなき家事』ランキング」を見れば、子どもでも十分に力を発揮できる仕事がたくさんあることがわかります。
- 裏返しの衣類や丸まった靴下をひっくり返す。
- 玄関で靴を下駄箱へ入れる。靴を揃える。
- トイレットペーパーの補充や交換をする。
- 服をクローゼットにかける。脱いだ服を回収して洗濯カゴへ入れる。
- 食事の献立を考える。
- 飲み終わったコップやペットボトルを片づける。洗う。
- オモチャなどの片づけをする。
- シャンプー・洗剤・ハンドソープなどの補充や詰め替えをする。
- 資源ゴミの分別や仕分けをする。
- お風呂や洗面台の排水溝に溜まった髪の毛を取り除く。お風呂や洗面台の掃除をする。
こうやってリストにしてみると、他にも色々な名もなき家事が浮かんでくると思います。
書き出してみましょう。
- キッチンの換気扇カバーの付け替えや換気扇掃除
- ドラム式洗濯機の乾燥フィルターの掃除
- トイレの便器や周辺の掃除
- ベランダ掃除
- 布団を干す。シーツを交換する。
- 棚や時計、手すりなどの埃取り
- 加湿器、空気洗浄機、浄水器、製氷機の洗浄(水の補充)
- 取扱説明書や重要書類の整理
- カーテンの開け閉め、照明のON・OFF
- 料理の配膳。箸を並べたり、テーブルを拭いたりなど。食べた後の食器片づけ。
これらのうちから、子どもに分担させるものを決めましょう。
ここで重要なのが、手伝いをさせる際に、親が手や口を出したり、誘導したりしてしまわないことです。
そうすると、子どもが達成感を味わえなくなります。
失敗したり、途中でくじけたりするのも必要な経験です。
気持ちを抑えて、思い切って全てを任せて子どもなりに試行錯誤する様子を見守りましょう。
子どもは自分で対処できるようになると、自分の能力に不安がなくなり、自信を持てるようになります。