遊びと実体験で育てる!子どもの算数力を高める学習法

子どもが算数を楽しく学ぶためには、数字や公式を暗記するだけでは不十分です。大切なのは、実体験や遊びを通じて数学的な概念を直感的に理解できる環境をつくること。特に、数量感覚を養う「具体物教育」を取り入れることで、子どもたちは数の本質をしっかりと身につけられます。本記事では、算数が得意な子を育てるための学習法を詳しく解説します。
算数が苦手な子どもが増える理由とは?

「うちの子は算数が苦手で……」と悩む親御さんは少なくありません。実際、算数に苦手意識を持つ子どもは年々増えているとも言われています。その背景には、いくつかの共通した原因があります。
1. 数字や公式の暗記が中心になっている
多くの子どもが算数を「覚える科目」だと捉えています。例えば、かけ算九九や公式を暗記することが算数の学習だと思い込んでしまうと、本質的な理解ができず、応用問題に対応できなくなります。算数は単なる暗記ではなく、数の概念を理解することが大切なのです。
2. 数量感覚を育む機会が少ない
現代の子どもたちは、数や量を「体感する」経験が不足しがちです。例えば、昔ならお小遣いを計算しながら買い物をしたり、外遊びの中で距離や時間を意識したりする機会が多くありました。しかし、デジタル化が進んだ現代では、数を意識する機会が減り、数量感覚が育ちにくくなっています。
3. 抽象的な概念を具体的な体験と結びつけていない
算数が苦手な子どもは、数や図形の概念がイメージしづらい傾向があります。例えば、「1/2(2分の1)」という分数を、ただの記号として覚えている子と、「1つのリンゴを半分に切った状態」としてイメージできる子とでは、理解度に大きな差が出ます。具体的な経験を通じて学ぶことが、算数の本質的な理解につながるのです。
4. 「間違えること=ダメなこと」と思ってしまう
算数は答えがはっきりしている科目ですが、その分、「間違えること」を恐れる子どもが多いのも特徴です。特に、日本の教育では「正解」を求める風潮が強く、試行錯誤する過程を大切にする機会が少ない傾向にあります。しかし、本来の算数は「なぜそうなるのか?」を考え、試行錯誤しながら答えを導き出す学問です。間違えながら学ぶことの大切さを伝えなければ、子どもたちは算数を「自分には向いていないもの」と感じてしまうでしょう。
算数が苦手になる主な原因は、「理解の機会不足」と「失敗を恐れる環境」にあります。 では、どうすれば子どもが算数を楽しく学び、得意になれるのでしょうか?次の章では、算数の理解を深めるための「具体物教育」について詳しく解説します。
具体物教育で「算数の本質」を理解させよう

算数の基礎をしっかりと身につけるためには、「目に見える形」で学ぶことが重要です。ただ公式を暗記するのではなく、実際のものを使いながら学ぶことで、子どもたちは算数の本質を理解しやすくなります。そのための学習法として有効なのが、「具体物教育」です。
具体物教育とは?
具体物教育とは、実際のものを使って数学的な概念を理解させる学習方法のことです。数や図形といった抽象的な概念を、実際の物を使って体験することで、子どもたちは直感的に理解できるようになります。
例えば、次のような方法があります。
- 積み木を使って数の概念を学ぶ
「3+2=5」を暗記するのではなく、積み木を3つと2つ並べて実際に数を増やす経験をすることで、足し算の意味を理解しやすくなります。 - 折り紙で分数を学ぶ
1枚の折り紙を半分に折ると「1/2」、さらに半分に折ると「1/4」となります。このように実際に折りながら学ぶことで、分数の概念を視覚的に捉えられます。 - おはじきやコインを使って掛け算や割り算を学ぶ
例えば、10個のおはじきを5つずつのグループに分けることで、「10 ÷ 5 = 2」の意味が実感できます。
このように、目に見える形で学ぶことで、数の概念がしっかりと身につくのです。
具体物教育が算数の理解を深める理由
なぜ具体物教育が算数の理解を助けるのでしょうか? その理由は、子どもが「納得しながら学べる」からです。
- 「数」は本来、抽象的な概念
数や計算は目に見えないものですが、実際の物を使うことで、「数」や「計算」が何を意味するのかを具体的にイメージしやすくなります。 - 経験を通じて学ぶことで記憶に残りやすい
ただ数字を見て覚えるよりも、実際に手を動かしながら学ぶ方が、子どもにとって印象に残りやすいものです。 - 学ぶ楽しさを感じられる
具体物を使うと、遊びの延長として算数を学べるため、「楽しい!」という気持ちが生まれやすいのも大きなメリットです。
家庭でもできる具体物教育の実践方法
「具体物教育は学校の授業でしかできないのでは?」と思うかもしれませんが、家庭でも簡単に実践できます。 例えば、次のような方法を試してみてください。
- おやつの分け方で分数を学ぶ
「クッキーを2人で分けると1人何個になる?」など、身近な場面で算数の概念を取り入れるだけでも、子どもは自然と学びを深めます。 - 買い物でお金の計算をする
お店で「100円のジュースを買ったら、おつりはいくら?」と一緒に考えることで、足し算や引き算の練習になります。 - 料理で計量を体験する
砂糖を「大さじ2杯」、水を「200ml」など、実際に測ることで「量」の概念が身につきます。
具体物教育を取り入れることで、子どもたちは算数を「生活の中で役立つもの」として理解できるようになります。 次の章では、さらに「数量感覚」を育てるための具体的な方法について紹介します。
数量感覚を育てる!日常生活でできる学習法

算数の基礎となる「数量感覚」は、数字や計算を覚えるだけでは身につきません。数量感覚とは、数や量の変化を直感的に理解する力のこと。これがしっかりと育っていれば、文章題や応用問題でもスムーズに考えられるようになります。
では、どうすれば数量感覚を鍛えられるのでしょうか? 実は、日常生活の中で意識的に数や量を扱うことで、自然と身につけることができます。 ここでは、家庭でも実践できる具体的な方法を紹介します。
1. 買い物で「お金の計算」をする
スーパーやコンビニでの買い物は、子どもにとって絶好の学習機会です。例えば、こんな質問をしてみましょう。
- 「このお菓子は3つで450円だけど、1つあたりいくらかな?」
- 「500円持っていたら、300円のジュースを買ったらおつりはいくら?」
お金のやりとりを通じて、足し算・引き算・割り算の概念が自然と身につきます。また、価格を比較することで、「どっちが安い?」「どっちがたくさん入っている?」と考える力も育ちます。
2. 料理で「量」の感覚を鍛える
料理には、分量を測る・割り算をする・時間を計るといった算数の要素がたくさん含まれています。例えば、次のような場面が学習につながります。
- 「カレーを4人分作るには、じゃがいもは何個必要?」(割合・掛け算)
- 「卵焼きを3等分するには、どう切ればいい?」(分数・図形の感覚)
- 「ケーキを180度で20分焼くと、2倍の大きさなら何分焼けばいい?」(時間と比例)
こうした体験を通じて、数量を意識しながら生活する習慣がつき、算数の応用力が身につきます。
3. おやつを分けて「分数の感覚」を身につける
「おやつの分け方」も、数量感覚を鍛える絶好の機会です。例えば、ピザやチョコレートを分けるときに、「1/2」「1/3」といった分数を意識させると、数の概念がより具体的に理解できます。
- 「4人で1枚のピザを分けたら、1人何切れ食べられる?」
- 「6個のチョコを3人で分けたら、1人いくつになる?」
実際に手を動かして分けることで、「分数=目で見て分かるもの」という感覚が身につき、教科書の中の数字がより意味のあるものに変わります。
4. 時計を使って時間の感覚を養う
時計を読むことは、数量感覚を鍛えるうえでとても重要です。アナログ時計を使って、次のような問いかけをしてみましょう。
- 「今5時だから、30分後は何時何分?」
- 「1時間30分後に出発するなら、何時に準備を始める?」
また、タイマーを使って「1分ってどれくらい?」「10秒間で何回ジャンプできる?」など、時間の長さを体感する遊びを取り入れるのも効果的です。
5. 遊びの中で数に触れる
遊びを通じて自然に数や量に触れることも、数量感覚を育てるポイントです。例えば、次のような遊びを取り入れてみましょう。
- トランプの「足し算・引き算ゲーム」
2枚のカードを引いて、足し算・引き算をする簡単なゲーム。速く計算できるほど勝ちやすくなるので、楽しく計算力を鍛えられます。 - すごろくで「進む・戻る」の感覚を養う
「3マス進んで、2マス戻るとどこにいる?」など、数直線の感覚を養うのに役立ちます。 - LEGOや積み木で「形と大きさ」を学ぶ
「このブロックは何個積むと同じ高さになる?」など、空間認識や体積の感覚を鍛える遊びもおすすめです。
まとめ
数量感覚は、日常生活の中で自然に育てることができます。「これって何個?」「どう分ける?」といった声かけを増やすだけで、子どもは数字や量の変化を意識するようになります。 また、ゲーム感覚で楽しみながら学ぶことが、算数を好きになる第一歩です。
次の章では、「遊び」を活用してさらに算数に親しみを持たせる方法について詳しく解説します。
遊びを通じて算数に親しみを持たせるコツ

「算数が苦手」と感じる子どもも、遊びの中で数や図形に触れることで、自然と興味を持ちやすくなります。楽しい体験を通じて学ぶことで、算数に対する抵抗感を減らし、「もっとやってみたい!」という気持ちを引き出すことが大切です。ここでは、遊びを活用して算数に親しみを持たせるための具体的な方法を紹介します。
1. ボードゲームで数の感覚を鍛える
ボードゲームには、足し算や引き算、戦略的思考を鍛える要素が詰まっています。
- すごろく:「3マス進んで、2マス戻るとどこにいる?」と考えることで、数直線の感覚を育てることができます。
- モノポリー:お金のやりとりをすることで、計算力や金銭感覚が身につきます。
これらのゲームを親子で一緒に楽しむことで、遊びながら計算や論理的思考を鍛えられるのがポイントです。
2. 折り紙やブロック遊びで図形の感覚を養う
算数の中でも、図形が苦手な子どもは多いです。折り紙やLEGO(レゴ)、積み木を活用すると、楽しみながら図形の感覚を鍛えることができます。
- 折り紙で対称性を学ぶ:「この折り紙を半分に折ると、どんな形になるかな?」と問いかけると、対称性の理解が深まります。
- LEGOで立体の構造を考える:「この形と同じものを作れるかな?」と挑戦させることで、空間認識能力を育てることができます。
- 積み木で面積や体積を学ぶ:「この箱に何個の積み木が入るかな?」と考えさせることで、体積や数量感覚を身につけることができます。
図形の感覚は、視覚的な体験を通じて学ぶことで、より理解しやすくなります。
3. かくれんぼや宝探しで位置関係を学ぶ
「前後・左右・上下」などの位置関係を学ぶことは、算数だけでなく、地図の理解や空間認識力を高めるのにも役立ちます。
- かくれんぼ:「〇〇の後ろに隠れたよ!」など、遊びながら位置を表す言葉を覚えられます。
- 宝探しゲーム:「3歩前に進んで、右に2歩。その近くにあるよ!」と指示することで、方向感覚を養えます。
- 迷路遊び:「ゴールまで何マス進めばいいかな?」と考えさせることで、道順を計算する力が鍛えられます。
こうした遊びを取り入れることで、位置や方向を意識しながら算数の基礎を身につけることができます。
4. リズム遊びで数のパターンを体感する
リズム遊びを活用すると、数の並びや規則性を感覚的に理解することができます。
- 手拍子ゲーム:「1回叩いて、次は2回、次は3回…」と、数を増やしながら手拍子をすることで、数の順序や倍数を意識できるようになります。
- 歌やダンスでリズム感を養う:「1・2・3・4!」とリズムに合わせて動くことで、音と数の関係を結びつけやすくなります。
- じゃんけん足し算:「勝ったら+2、負けたら-1」とルールを決めて遊ぶことで、自然に計算力が鍛えられます。
このように、音や動きを取り入れることで、算数を感覚的に学ぶことができます。
まとめ
遊びを取り入れることで、算数に対するハードルを下げ、子どもたちは楽しみながら数や図形の概念を理解できます。
- ボードゲームで計算力を鍛える
- 折り紙やブロックで図形の感覚を養う
- かくれんぼや宝探しで位置関係を学ぶ
- リズム遊びで数のパターンを体感する
「学ぶこと=楽しい!」という体験を増やすことが、算数を得意にする第一歩です。 算数に苦手意識がある子どもでも、遊びを通じて親しみを持たせることで、自然と「もっと知りたい!」という気持ちが育ちます。
日常の中で、ぜひ算数を「遊び」として取り入れてみてください!