作文が苦手な子どもをサポートする「型」の力:楽しく書けるようになる本当の理由とは?

「作文が苦手」
「何を書けばいいのかわからない」
「原稿用紙の前で、手が止まってしまう」
こうした悩みは、決して珍しいものではありません。
小学生でも、中学生でも、作文に苦手意識を持つ子は多くいます。
その一方で、保護者の間ではこんな声もよく聞かれます。
「もっと自由に書かせた方がいいのでしょうか」
「楽しんで書けるようになれば、自然と上達しますか」
一見、もっともらしく聞こえる考え方です。
しかし、指導の現場で長年子どもたちを見てきた立場から言うと、
作文が苦手な子ほど、「自由に書く」ことが最大の壁になります。
作文が書けない原因は「センス」や「表現力」ではない

まずは、はっきりさせておきたいことがあります。
作文が書けない子は、
- 表現力がない
- 言葉を知らない
- 想像力が乏しい
わけではありません。
多くの場合、つまずいているのは次の点です。
- どこから書き始めればいいのかわからない
- 何を書けば「作文として正しい」のか見えない
- 書いている途中で「これでいいのか」と不安になる
つまり、文章以前に「構造」が見えていないのです。
この状態で
「自由に書いていいよ」
「好きなことを書けばいいよ」
と言われると、子どもはますます混乱します。
自由とは、本来、選択肢が見えている人にとって成立するものです。
何も見えていない状態での自由は、
安心ではなく、放り出される感覚になってしまいます。
「型」は子どもを縛るものではなく、支えるもの

作文指導でよくある誤解の一つが、
「型に当てはめると、個性がなくなる」という考えです。
確かに、型を絶対視し、
一字一句同じ形で書かせれば、
窮屈に感じる子も出てくるでしょう。
しかし、ここで言う「型」は、
暗記させるテンプレートではありません。
たとえば、
- はじめ:何について書くか
- なか:そのとき何が起きたか
- おわり:どう思ったか・何を感じたか
この程度の枠組みです。
この「型」があるだけで、
- 次に何を書けばいいかが分かる
- 書き進める見通しが立つ
- 書き終わりが見える
ようになります。
これは制限ではなく、
思考を支える道しるべです。
「楽しく書く」とは、自由に書くことではない

作文指導でよく使われる言葉に、
「楽しく書くことが大切」というものがあります。
この言葉自体は、間違いではありません。
ただし、意味を取り違えると逆効果になります。
子どもにとっての「楽しい」は、
- 好き勝手に書ける
- 何を書いても否定されない
ことではありません。
多くの子どもにとっての楽しさは、
- 書き始められた
- 最後まで書き切れた
- 先生や親に「なるほど」と言ってもらえた
という達成感から生まれます。
その達成感を支えているのが、
作文の「型」です。
型があるから、書き始められる。
型があるから、途中で迷わない。
型があるから、書き終えられる。
この積み重ねが、
「作文は苦手」から「書けた」に変わる瞬間です。
学年ごとに違う「つまずき方」と型の役割

作文のつまずき方は、学年によっても異なります。
低学年の場合
- 一文が極端に短い
- 「楽しかったです」で終わる
- 何を書いているのか分からない
この段階では、
文の順序そのものが見えていません。
型があることで、
「まず出来事を書く」
「次に気持ちを書く」
という流れが理解でき、
文として成立しやすくなります。
中学年の場合
- 出来事を並べるだけで終わる
- 気持ちがほとんど書かれない
ここでは、
「何を書く作文なのか」が曖昧になっています。
型を使って、
- 出来事
- そのときの気持ち
- 今どう思うか
を整理することで、
内容に厚みが出てきます。
高学年の場合
- 言葉は多いが、抽象的
- 何を伝えたいのか分からない
この段階では、
型は「考えを整理する道具」になります。
出来事と気持ちを結びつけることで、
読み手に伝わる作文に近づいていきます。
型があると「直し方」も見えてくる

作文指導で難しいのが、
「どこをどう直せばいいのか」を伝えることです。
型がない作文では、
- 何が足りないのか分からない
- どこを直せばよくなるのか見えない
という状態になりがちです。
一方、型があれば、
- この作文には「気持ち」が足りない
- 出来事ばかりで終わっている
- 最後のまとめが弱い
といった具体的な視点が持てます。
これは、
「上手・下手」という感覚的な評価ではなく、
直せる作文につながります。
家庭でできるサポートは「教えない」こと
家庭で作文を見るとき、
つい文章を直してあげたくなるものです。
しかし、それでは
子どもは「書かされる側」になってしまいます。
家庭で意識したいのは、
- 今回はどんな型の作文?
- この段落は、型のどこにあたる?
といった声かけです。
型を一緒に確認するだけで、
子どもは自分で直せるようになります。
ずっと型通りでいいわけではない
ここで一つ、誤解を防いでおきます。
作文は、永遠に型通りで書くものではありません。
ただし、
- 型を知らないまま自由に書く
- 型を経験せずに個性を求める
これは、かなり難しいやり方です。
まずは、
- 型を使って書ける
- 型を使って直せる
という経験を積むことが先です。
その上で、
少しずつ型を崩していくことで、
本当の意味での「自由な表現」が生まれます。
まとめ|作文が苦手な子ほど「型」が力になる
作文が苦手な子に必要なのは、
才能でも、特別なセンスでもありません。
- 書き始めるための型
- 書き進めるための順序
- 直すための視点
この3つがそろったとき、
子どもは安心して書けるようになります。
「型」は、
作文を縛るものではなく、
書くことを支えるための道具です。
この視点を持つだけで、
作文への向き合い方は大きく変わります。
よくある質問(FAQ)
作文が苦手な子でも、「型」を使えば本当に書けるようになりますか?
はい、書けるようになります。
作文が苦手な子の多くは、表現力ではなく「何から書けばよいかわからない」状態にあります。型があることで、書く順番と見通しが立ち、安心して書き始められるようになります。これは低学年だけでなく、高学年や中学生にも共通します。
型を使うと、個性がなくなってしまいませんか?
個性がなくなることはありません。
型は文章を縛るためのものではなく、考えを整理するための道具です。型を使って「書けた」「伝わった」という経験を積むことで、結果的に自分なりの表現が出てくるようになります。型を経験せずに自由だけを求める方が、かえって表現は狭くなります。
家庭では、どこまでサポートするのがよいのでしょうか?
文章を直してあげる必要はありません。
家庭では、「この作文はどんな型だった?」「この段落は何を書くところ?」といった問いかけをするだけで十分です。型を確認する関わりが、子どもが自分で直す力につながります。

