スマホ時代に集中できない子が増える理由と“メディアスリム化”で整える学びの環境

最近、授業中の子どもたちを見ていて「集中の続きにくさ」が気になる場面が増えてきました。やる気が無いわけではありません。問題を解く力が無いわけでもありません。途中までは順調なのに、急に視線が外れたり、考えが止まったりします。背景には、スマホやタブレットの刺激が多い生活があります。
学校でも、岡山市を含む多くの地域で「メディアスリム化運動(メディアスリム化大作戦等)」が広がっています。デジタル刺激を減らし、子どもの集中を守るための取り組みです。この記事では、スマホ時代のなかで子どもたちの集中が途切れやすくなる理由を、教室で見える具体例を交えながらお話しします。ご家庭で今日からできる工夫もまとめています。
集中できない子が増えている背景
小学生や中学生と接していると、以前よりも集中が続きにくい姿が目立つようになりました。子どもが悪いわけではありません。家庭の環境や学校の授業が変わったわけでもありません。大きく変わったのは、生活の中心にスマホやタブレットが入り込んだことです。
いまの子どもたちを取り巻く環境では、集中を妨げているのはスマホだけではありません。テレビ、YouTube、タブレット、動画アプリなど、家庭内には多くのメディア刺激があります。これらはすべて学校で進められている「メディアスリム化運動」の対象で、どれか一つを減らせばよいというものではなく、生活全体の刺激の量を整えることが集中を守るうえで大切になります。
授業をしていると「今は集中のスイッチが入っている」と感じる瞬間があります。目の動きが一定で、手元に意識が向き、考える姿勢が安定しています。しかし最近は、そのスイッチが切れるまでの時間が短くなっています。考え始めてから数分で視線が揺れてしまう子もいます。
多くの場合、原因は細かく入り続ける刺激です。家庭では、動画アプリやゲームアプリから届く通知が止まりません。友達とのメッセージも増えています。通知の音を切っていても、子どもの頭の中には「何か届いているかもしれない」という予測が生まれ、集中が途切れます。
岡山市の小学校でも取り組まれている「メディアスリム化運動」は、この流れを変えるための取り組みです。備前市が先行して成果を上げ、文部科学大臣表彰を受けたことでも知られています。メディアスリム化は、生活の中にある余分なメディア時間を減らし、集中や睡眠を守る考え方です。単なる“スマホ禁止”ではなく、必要な場面と不要な場面を切り分ける生活習慣を整えることが目的です。
集中の弱さは性格の問題ではありません。
子どもの頭が弱いわけでもありません。
環境が子どもの集中を削っているだけです。
教室で見える「集中が途切れる瞬間」
問題の途中で手が止まる子
計算問題や文章題を解いていると、急に手が止まる子がいます。少し前までは順調に解いていたのに、突然考えが進まなくなるのです。よく見ると、視線が上にふわっと上がる癖があります。これは脳がアイデアを探している時間ではなく、刺激を探している時間です。
普段から動画やゲームで強い刺激に触れている子は、静かな思考が長く続きません。考える力が弱いのではなく、「静けさの中で考える時間」に慣れていないのです。
手は動いているのに頭が動いていない子
字を書いていても、計算をしていても、動きだけが続いている子がいます。これは「作業モード」に入った状態です。文章を写す宿題が多い子に見られやすい傾向です。
この状態では、頭の中で情報が整理されません。理解につながる思考が止まっているため、同じ問題を次の日に解いても、前日の内容がほとんど残っていません。
休憩後の再スタートが極端に遅い子
休憩時間にスマホやタブレットで動画を見たり、ゲームをしたりすると、再スタートが遅くなります。これは強い刺激に触れた後は、静かな学習モードに戻るまでに時間がかかるためです。
脳が「もっと強い刺激」を求めてしまい、問題と向き合うまでの時間が長くなるのです。
家庭で集中を守るための3つの工夫
1. 学習前の「スマホ置き場」を決める
集中を守るために最も効果があるのは、学習前にスマホを手元から完全に離す習慣です。通知を切るだけでは不十分で、視界に入るだけでも脳は刺激を予測してしまいます。
家庭では、
・リビングの棚
・玄関近くの決まったスペース
など、家族全員が使える共通のスマホ置き場を作ると、学習への入り方が安定します。
また、トイレへの持ち込みは禁止にすることも大切です。短時間でも刺激に触れると、静かな思考への切り替えが遅くなるためです。家庭内で「ここだけは持ち込まない場所」を決めておくと、生活全体のリズムも整います。
2. 学習時間を短く区切り、刺激を減らす
「30分集中しなさい」と言っても、いまの子どもたちにとっては難しい場面が多いように感じます。
そこで効果的なのが、短時間で区切る学習です。
・15分だけ取り組む
・5分休憩を入れる
・再スタートも同じリズムで
というように、短く区切ると、集中しやすい状態を作れます。
これは、動画やSNSなどの短い刺激に慣れている子どもたちに合いやすい方法です。
休憩時間のゲームはおすすめしません。
「5分だけ」では脳が切り替えられず、むしろ再スタートが遅くなるからです。
休憩も静かな形にしたほうが、学習への流れが自然になります。
3. 終わった後に「短い達成の会話」を入れる
集中を続けられた日は、内容よりも「続けられたこと」を言葉にして伝えると、次の学習につながります。
・今日の計算はよく手が動いていたね
・文章題の途中で止まらなかったね
このような会話を短く入れるだけで十分です。
集中が続くと、子どもは自分の力を信じられるようになります。
メディアとのつき合い方を整える家庭の工夫
上の3つに加えて、家庭で取り入れやすいメディアスリム化の工夫として、次のような方法も効果があります。
- TV/YouTubeは「見ていい時間帯を固定する」
- 夜21時以降は保護者がスマホをリビングで預かる
- 食事中のスマホは禁止にして会話の時間を守る
- SNSは“チェックする時間帯”を決めて使う
これらはすべて、「環境を整えるだけで集中が守れる」形のシンプルな方法です。
家庭によって方針が違っても、今日から取り入れやすい内容ばかりです。
スマホと自律の関係をどう考えるか
完全に禁止すると起きる問題
家庭で禁止すると、学校で我慢できなくなることがあります。強く制限するほど、外で反動が出る子もいます。スマホとの距離感は、生活の中でゆっくり整えていくほうがうまくいきます。
上位層の子がしている「距離の取り方」
成績の良い子は、スマホを持っていても学習中に触りません。親が管理しているからではなく、自分で切り替える力があるからです。
その力は、特別な才能ではありません。日々の積み重ねで身につきます。
家庭でできる「自律の練習」
子どもが自分で管理できるようになるには、次のような小さな練習が役立ちます。
- 学習前に自分でスマホを置く
- 学習後にスマホを取りに行く
- 動画やゲームの時間を自分で決める
家庭でメディアスリム化を意識すると、子どもが「自分の生活を自分で整える練習」ができます。
集中を取り戻すと学びの質は大きく変わる
集中が続くようになると、子どもの学びは安定します。
理解が深まり、問題のつながりが見えやすくなります。
成績の伸び方も変わります。
集中は才能ではありません。
家庭と学校と塾で、刺激の量を整える環境が整えば、子どもの力は自然に発揮されます。
学校のメディアスリム化運動と家庭での取り組みがつながると、子どもの生活は安定します。塾でも学習への入り方がスムーズになり、考える時間が伸びていきます。
環境が整えば、子どもの力は静かに伸びていきます。
学習中の集中は、家庭の小さな工夫で守れます。

