なぜ今、語彙力が必要?国語力向上のカギと家庭でできるサポート── 伸びない最大の原因は「家庭の誤解」にある

語彙力が大事。
これは、誰もが知っています。
問題はそこではありません。
多くの家庭が「語彙力」を大事にしているつもりで、
実は語彙力を伸ばしにくい関わり方をしています。
そして厄介なのは、親が熱心な家庭ほど
その誤解が固定されやすいことです。
この記事では、語彙力を「言葉をたくさん知る力」と捉えるところから一度離れて、
語彙力が伸びない“家庭側の前提”を壊すところから始めます。
語彙力の誤解①:語彙力=言葉をたくさん知っていること

まず、いちばん多い誤解です。
語彙力とは、
「知っている単語の数」ではありません。
語彙力とは、もっと乱暴に言えばこうです。
その言葉の意味を、別の言葉で説明できるか。
文脈に合わせて使い分けられるか。
似た言葉との違いを言語化できるか。
ここができないと、単語を知っていても
国語の点数には変わりません。
例えば、子どもにこう聞いてみてください。
- 「冷たい」ってどういう意味?
- 「やさしい」と「親切」は同じ?違う?
- 「つまり」って、何が起きる合図?
- 「しかし」って、文の流れがどう変わる?
ここで言葉が止まる子は、
読解以前に「意味が確定しない状態」で文章を読んでいます。
語彙力の誤解②:読書をしていれば自然に語彙が増える

読書は良い。
それ自体は否定しません。
ただ、ここに大きな落とし穴があります。
読書量が多くても語彙が増えない子は、
読んでいる最中にこうしています。
- 分からない言葉を飛ばして読む
- 雰囲気で処理して先へ進む
- 意味を確かめず、ストーリーだけ追う
つまり、読書が「語彙学習」になっていません。
親は「読めている」と思います。
子どもも「読めている気がする」と思います。
しかし、語彙は増えません。
その結果、何が起きるか。
読解問題で、本文の微妙なニュアンスを取り違えます。
記述で、言葉が出てこないため、薄い答えになります。
上位層でも、ここで失速します。
語彙力の誤解③:語彙ドリルをやれば国語力が上がる
語彙ドリルは、使い方次第です。
問題は、家庭でよくある使われ方です。
- 意味を暗記する
- 〇×をつける
- できた気になる
- 文章の中で使わない
これでは、語彙力は伸びません。
語彙力は「知識」ではなく、運用だからです。
同じ言葉でも、文脈で意味が変わります。
似た言葉は、使い分けが必要です。
国語で点になるのは、そこです。
だから、語彙ドリルをやっているのに伸びない子は、
「家庭が真面目」なほど増えます。
やっているのに伸びない。
この状態が一番つらい。
その原因は、教材ではなく、運用の設計ミスです。
語彙が弱い子の“典型症状”はここに出る
語彙力が足りない子は、読解で次のミスをします。
- 「つまり」「しかし」を読んでも流れが変わらない
- 指示語(これ・それ)が何を指すか追えない
- 心情語が「うれしい」「かなしい」止まり
- 比喩を“雰囲気”で処理して、根拠が消える
- 記述で言い換えができず、同じ言葉を繰り返す
これは、努力不足ではありません。
多くの場合、家庭でこういう学習が刷り込まれています。
- 分からない言葉は飛ばしていい
- 正解っぽい答えならOK
- 速く進める方が偉い
- 「感じたこと」を書けば点が入る
これが積み重なると、
言葉を厳密に扱う癖が育ちません。
家庭がやりがちな“語彙を潰す”関わり方
語彙力が伸びない家庭には、共通する関わりがあります。
① 親が先回りして説明する
子どもが詰まった瞬間に、親が言い換えてしまう。
すると子どもは、
「自分で意味を確定する機会」を失います。
② 「こういうことだよね?」と答えを誘導する
親は優しさでやっています。
でも、子どもは“考えないで当てにいく癖”を覚えます。
③ 曖昧でも褒めて終わる
「だいたい合ってるね」
これを続けると、言葉の精度が上がりません。
語彙力は、
曖昧さを放置すると伸びません。
家庭でやるべきことは「言葉を増やす」ではない
ここで結論に戻します。
家庭でやるべきことは、
言葉を増やすことではありません。
言葉を“雑に使えなくする”ことです。
そのために、家庭でできるサポートはこの方向になります。
- 子どもが使った言葉を「別の言葉で言い換えさせる」
- 似た言葉の違いを「一言で説明させる」
- 文脈が変わると意味が変わることを「例で確認する」
これができると、語彙力は点数に変わります。
「家庭でできる」サポートは、こういう形が強い
1)言葉を“別の言葉で”言わせる
子どもが「すごい」と言ったら、
「すごいって、どうすごい?」と聞く。
- 速い
- 大きい
- 難しい
- うまい
- びっくりする
この「分解」が語彙力です。
2)似た言葉の違いを“一言で”言わせる
例:
「やさしい」と「親切」
「きびしい」と「こわい」
一言でいい。
説明できないなら、語彙が“知識”のままです。
3)接続語だけは、意味を固定する
「つまり」=まとめ
「しかし」=逆
「だから」=理由の結果
ここが雑だと、文章は全部ズレます。
語彙というより、国語の土台です。
教材より先に、家庭で整えるべき前提
国語の教材は、
使えば自動的に語彙力が伸びる――
そんな便利な道具ではありません。
同じ教材を使っても、
伸びる家庭
ほとんど変わらない家庭
が分かれるのは、
教材の良し悪しではなく、家庭の前提が違うからです。
特に差が出るのは、
「語彙力」をどう捉えているか。
語彙力を
・知っている言葉の数
・読書量の結果
と考えている家庭では、
どんな教材を使っても効果は限定的になります。
一方で、
- 言葉の意味を言い換えさせる
- 文脈によって意味が変わることを確認する
- 「なぜその言葉が使われたのか」を考えさせる
こうした視点が家庭にある場合、
教材は練習の補助輪として、きちんと機能します。
教材選びで悩む前に、
まず見直すべきなのは
家庭の語彙観・言葉の扱い方です。
ここが整って初めて、
教材は「力を伸ばす道具」になります。
まとめ:語彙力が必要な理由は、国語の点数だけではない
語彙力が弱いと、国語が伸びない。
それは当然です。
しかし本質はそこだけではありません。
語彙が弱い子は、
考えを組み立てるときに言葉が足りず、
結局「雰囲気」で処理します。
そして家庭がそれを許すと、
その癖が固定されます。
だから、語彙力が伸びない最大の原因は
子どもではありません。
家庭が「語彙力」を誤解したまま、
良かれと思って関わっていること。
まず、ここを正しく戻す。
それだけで、国語の伸び方が変わります。
よくある質問(FAQ)
語彙力が弱い子は、まず何から始めればいいですか?
単語を増やすより先に、「その言葉を別の言葉で説明できるか」を確認するのが先です。説明できない言葉は、読んでいても意味が確定しません。
読書をしているのに語彙が増えないのはなぜですか?
分からない言葉を飛ばして読んでいる可能性が高いです。読書が語彙学習になるのは、言葉を確かめる癖がある場合だけです。
語彙ドリルはやめた方がいいですか?
やめる必要はありません。ただし「意味暗記」だけだと伸びません。文脈で使えるか、言い換えられるかまで扱う設計が必要です。
親が説明してあげるのは悪いことですか?
目的次第です。すぐ説明すると「自分で意味を確定する機会」が減ります。最初は問い返して、子どもに言葉を選ばせる方が伸びやすいです。
上位層でも語彙が原因で失速しますか?
します。点が取れる子ほど雰囲気で処理して進みやすく、記述や難度が上がった段階で「言葉の精度」が足りずにズレが出ます。

