「具体と抽象」を理解して国語力を伸ばす──小学生から始める語彙力アップの本質

「言葉は知っているはずなのに、文章が読み取れない」
「説明問題になると、何を書けばいいかわからない」
「感想がいつも同じ表現になる」
こうした悩みは、国語が伸び悩む子どもによく見られます。
そして多くの場合、原因は
- 読書量
- 語彙の数
- 勉強時間
ではありません。
国語が伸びない子の多くは、
「具体」と「抽象」を行き来する力が弱いのです。
国語ができない原因は「語彙不足」ではない
まず、はっきりさせておきます。
語彙力が大切なのは事実です。
しかし、
- 言葉をたくさん知っている
- 難しい言葉を使える
ことと、
国語の点が取れることは別です。
実際、次のような子は珍しくありません。
- 会話は達者
- 言葉もよく知っている
- でも、説明問題が書けない
このときに起きているのが、
具体と抽象の整理ができていない状態です。
「具体」と「抽象」とは何か
ここで言う「具体」「抽象」は、
難しい哲学用語ではありません。
- 具体:実際の出来事・場面・例
- 抽象:そこから共通点を抜き出した考え
たとえば、
- 雨の日に転んで嫌な気持ちになった
- 友だちにからかわれて悲しかった
これはすべて「具体」です。
一方で、
- 思い通りにいかないと人は落ち込む
- 相手の言葉は気持ちに影響する
とまとめたものが「抽象」です。
国語の問題は、
具体から抽象へ、抽象から具体へ
この行き来を求めてきます。
国語の問題は「具体→抽象」でできている
説明問題や記述問題をよく見ると、
- 本文に書いてある出来事(具体)をもとに
- 登場人物の考えやテーマ(抽象)を答えさせる
構造になっています。
しかし、具体と抽象の区別があいまいな子は、
- 本文を写して終わる
- 逆に、ふわっとした感想を書く
どちらかに偏ります。
これは努力不足ではありません。
考え方の整理ができていないだけです。
語彙力アップとは「言葉を覚えること」ではない
語彙力を伸ばすというと、
新しい言葉を覚えることや、
難しい言葉を使えるようになることを想像しがちです。
もちろん、言葉を知ること自体は大切です。
しかし、国語の成績が伸びない子を見ていると、
問題は「知らない言葉が多いこと」ではありません。
実際には、
- 出来事を長々と説明してしまう
- 何が言いたいのか分からない
- 感想が毎回似た表現になる
といった状態が目立ちます。
これは語彙が足りないのではなく、
言葉を整理して使う力が弱いということです。
国語で求められている語彙力とは、
具体的な出来事を、
一段上の言葉でまとめる力です。
たとえば、次のような場面を考えてみてください。
ある子が、
「運動会のリレーで転んでしまい、とても悔しかった」
「でも、友だちが声をかけてくれて、少し元気が出た」
と話したとします。
これはすべて、実際に起きた具体的な出来事です。
ここから一段上の言葉にまとめると、
「思い通りにいかない経験をして、気持ちが揺れ動いた」
という表現になります。
これが、抽象です。
さらに、この抽象表現を使えば、
- テストで失敗したとき
- 習い事で結果が出なかったとき
といった、別の場面にも当てはめることができます。
このように、
具体的な出来事を一度まとめ、
別の具体に使い回せる言葉に変えること。
これが、国語で求められる語彙力です。
単語を一つひとつ暗記することではありません。
具体を抽象化し、必要に応じて具体に戻す力です。
この力が育ってくると、
- 本文をそのまま写さなくなる
- 設問に合った言葉を選べる
- 短い記述でも、内容が伝わる
ようになります。
語彙力アップとは、
言葉の数を増やすことではなく、
言葉を使える形に整理することなのです。
小学生のうちに身につけたい「行き来する力」
小学生の段階では、
- 抽象的な言葉を使わせる
- 難しい説明を書かせる
必要はありません。
大切なのは、
- この話は「どんなことを言っているの?」
- つまり、どういうこと?
と問い返される経験です。
具体的な話をしたあとに、
一言でまとめさせる。
これだけで、
具体→抽象の回路が育ちます。
具体と抽象が分かれると、国語の点が安定する
この力が身についてくると、
国語の答案が変わります。
- 本文をそのまま写さなくなる
- 設問に合った言葉を選べる
- 記述が短くても、的確になる
結果として、
- 初見の文章
- 長い文章
にも対応できるようになります。
これは、
読書量を増やした結果ではありません。
考え方の整理ができた結果です。
家庭でできる具体と抽象のサポート
家庭でできることは、
決して難しくありません。
- 今日あったことを聞く
- そのあとで「一言で言うと?」と聞く
これだけです。
答えがうまく出なくても構いません。
考えようとすること自体が、
大切な練習になります。
まとめ|国語力の正体は「言葉の整理力」
国語が伸びない原因は、
- 読書不足
- 語彙不足
だけではありません。
多くの場合、
具体と抽象を行き来する力が育っていない
それだけです。
この力は、
- 小学生から
- 日常会話の中で
十分に育てられます。
言葉を増やす前に、
言葉を整理する力を育てる。
それが、
国語力を本質的に伸ばす方法です。
よくある質問(FAQ)
「具体と抽象」は小学生には難しくありませんか?
難しくありません。
この記事で扱っている「具体と抽象」は、難しい用語理解ではなく、「起きた出来事を一言でまとめる」「つまりどういうことかを考える」といった日常的な思考です。小学生でも、問いかけ次第で十分に身につけることができます。
語彙力を伸ばすには、やはり言葉をたくさん覚えた方がよいのでしょうか?
必ずしもそうではありません。
国語で必要な語彙力とは、言葉の数ではなく、出来事を整理して使える言葉に変える力です。暗記よりも、「一段上の言葉でまとめる」経験を積むことが、記述力や読解力につながります。
家庭では、どのような声かけをすると効果的ですか?
出来事を聞いたあとに、「一言で言うとどういうこと?」と問い返すだけで十分です。うまく答えられなくても問題ありません。考えようとする過程そのものが、「具体と抽象」を行き来する練習になります。
具体例をたくさん覚えさせるのは効果がありますか?
効果は限定的です。
具体例を覚えるだけでは、その場面でしか使えません。大切なのは、具体例を一度まとめて、別の場面でも使える言葉に変えることです。例を増やすより、「どうまとめたか」を振り返る方が、国語力は伸びます。
記述問題が苦手な子にも、この考え方は役立ちますか?
役立ちます。
記述問題が苦手な子は、「何を書けばよいか分からない」状態になっています。具体と抽象を行き来する力が身につくと、本文の出来事をそのまま写すのではなく、設問に合った言葉でまとめられるようになります。

