子どもが自分から勉強しないのはなぜ?|「やる気がない」で終わらせない考え方

「うちの子、やる気がなくて」。保護者の方からよく聞く言葉です。ただ、子どもが勉強しない理由をやる気の有無だけで説明しようとすると、大人にできることは励ますか叱るかしか残りません。実際には、勉強に向かえない理由は子どもによって違います。この記事では、やる気という言葉でひとまとめにする前に、大人が何を見ればいいのかを整理します。
「やる気がない」で片づけると、打つ手がなくなる
やる気という言葉は便利です。説明がつかない状態を、ひとことで言い表せてしまいます。
ただ、この言葉には手順がありません。「やる気を出す」という動詞は、実行できる形になっていないのです。
テストが返ってきた日に「やる気がないからでしょ」と言われた子を想像してみてください。その子が次の日に何をすればいいのか、この言葉からは何も出てきません。しかも、点数の話だったはずが、いつのまにか自分の性格の話にすり替わっています。これでは、子ども自身も「では、何を直せばよいのか」が分かりにくくなります。
保護者の方が悪いわけではありません。子どもが動かないのを見て、いちばん近くで焦っているのは家族です。ただ、「やる気がない」という見立てのままだと、声のかけ方が限られてしまいます。強く言うか、あきらめて待つか。その二択の外に出るために、もう少し細かく見ていきます。
勉強に向かえない理由は、子どもによって違う
同じ「ワークが白紙のまま」という状態でも、その理由はいくつも考えられます。
問題の内容が分からず、手をつけられない
一つ考えられるのは、単純に内容が理解できず、問題を解けないという状態です。
たとえば、約分があいまいなまま比の単元に入る。英語の語順がぼんやりしたまま長文に進む。ノートは開いています。ペンも持っています。でも、書けません。
この状態の子に「集中しなさい」と言っても、集中する対象がありません。分からないものを見つめ続けるのは、大人でもきついはずです。
何から始めればよいか決められない
たとえば、「勉強しなさい」と言われて机に向かったものの、どの教材から始めればよいか決められず、なかなか取りかかれないことがあります。
この場合は、やる気がないのではなく、何から始めればよいか整理できていないのかもしれません。教材が何冊もある。学校の課題もある。テストは三日後。何から始めれば間に合うのか、その見当がついていない。
大人でも、やることがいくつも並ぶと、優先順位を決められず、取りかかりやすいことから始めてしまうことがあります。子どもでも同じように、何から始めるか決められないまま、勉強以外のことへ気持ちが向いてしまうことがあります。
自分で決めることに慣れていない
「今日は何をやるの?」と聞かれて、「わからない」「何やればいい?」と返ってくる子がいます。
これまで、やることを全部決めてもらってきた場合、決める側に回った経験がほとんどありません。決めるのにも慣れがいります。何を選べばいいのか、選んだあとどうなるのか、その感覚がまだない状態です。
勉強する意味が、まだ本人の言葉になっていない
「将来のために」という理由が、まだ本人の実感になっていないこともあります。
小学生や中学生の段階では、将来の姿を具体的に思い描けないことも珍しくありません。それ自体は問題ではありません。ただ、大人には納得できる理由でも、子ども本人にとってはまだ遠く感じられることがあります。
このとき、目の前の勉強と本人の関心がどこかでつながると、学び方が変わることがあります。たとえば、歴史の本やマンガをきっかけに社会への関心が広がることもあります。そうした入口も、学びに向かうきっかけの一つです。
学びたい気持ちが、これから出てくる途中
子どもが学習に向かう時期やきっかけには個人差があります。
今、自分から動けていないからといって、それだけで「この子はこういう性格だ」と決めつける必要はありません。理解が進んだり、自分で選ぶ経験が増えたり、興味のあることと学習がつながったりすることで、関わり方や学び方が変わることがあります。
大切なのは、今の姿を固定的に見るのではなく、その子がこれから変わる余地を残しておくことです。
「自分からやる子」は、最初からそうだったわけではない
自主性は生まれつきの性格だけで決まるものではありません。自分で決めてやってみて、うまくいかなければ方法を見直すという経験を重ねることも、自分で動けるようになるためには大切です。
ここで、よく言われる二つの考え方を並べてみます。
ひとつは「口を出さずに見守れば、そのうち自分からやるようになる」。もうひとつは「今のうちは親が管理しないと勉強しなくなる」。正反対の考え方に見えます。
ただ、どちらにも注意したい点があります。何も教えずに任せれば、何をどう決めればよいか分からないことがあります。反対に、大人がすべて決めれば、子ども自身が判断する機会は少なくなります。どちらの場合も、自分で決め、やってみて、うまくいかなければ考え直す経験を積みにくくなります。
つまり、放任か管理かという軸で考えている限り、話が前に進みにくいのです。見るべきなのは、今その子がどこまで自分でできて、どこから手が要るのか、という線引きのほうです。
見るのは「やる気があるか」より「何に困っているか」
「なんでやらないの」と考えるよりも、「何が分からないのか」「何を決められずにいるのか」と具体的に見た方が、必要な対応が分かりやすくなります。
何に困っているのかを知るには、実際に取り組んでいる様子を確認することが手がかりになります。
問題文を読んだところで手が止まるのか。式は書けるけれど計算で間違えるのか。そもそも、どのページをやればいいのかを聞き返してくるのか。手の動き方が違えば、必要なものも違います。
分からないなら、戻って教える。順番が決まらないなら、一緒に並べる。決めた経験が少ないなら、小さいところから任せる。同じ「勉強しない」でも、やることは変わります。
家でできる関わりを、四つに分けて考える
家庭でできることを、動きの順に整理します。全部やる必要はありません。今その子に要るものだけで十分です。
状態を聞く。「なんでやってないの」と理由を求めるだけでなく、「どこまで進んだ?」「どの問題で止まった?」と、今の状態を具体的に聞いてみます。何が起きているのかを一緒に確認しやすくなります。
分からないところは、教えてもいい。「親が教えると自分でやらなくなる」とよく言われます。ただ、分からない状態が続けば、それが学習を止める原因になることもあります。教えるときは、答えを先に言う前に、どこまで分かっているのかを確認してからにすると、本人の考える余地が残ります。
家庭学習で親がどこまで教えるかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

やることを一緒に並べる。今日やる分を、紙でもノートの端でもいいので書き出してみる。並べるのは一緒でも、最後にどれからやるかを決めるのは本人に渡します。
できるところは任せて、口を出さない。丸つけ、やり直し、翌日の準備。任せられる部分は少しずつ増やしていきます。ここがいちばん我慢のいるところです。手を出したほうが早いので、つい取り上げてしまいます。
四つのうち、どれを厚くするかは子どもによって変わります。全部を毎日やろうとすると、家の中が学習管理の場になってしまいます。
自学力は「一人でやる力」ではない
サンライズでは、自学力を「一人で全部やりきる力」とは考えていません。
サンライズが考える「自学力」については、こちらの記事で詳しく整理しています。

分からないときに、分からないと言えること。どこが分からないのかを、自分で切り分けられること。教わったあと、自分のやり方に戻せること。ここまで含めて、自分で学習を進める力だと考えています。
分からないまま長く止まっているよりも、「ここが分からない」と助けを求めてから、もう一度自分で取り組める方が学習は前へ進みます。助けを求めるのは、自力でやることの反対側にあるものではありません。
大人の役割は、代わりにすべて考えることではありません。自分で考えたり、選んだり、やり方を見直したりできる部分は、少しずつ本人に任せていきます。どこまで任せるかは、その子の今の状態に合わせて考える必要があります。
「任せること」と「放置すること」の違いについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

おわりに
「やる気がない」という見立ては、一度手放してみてください。
そうすると、見えるものが変わります。内容が分からないのか。何から始めればよいか決められないのか。自分で決める経験がまだ少ないのか。学ぶことへの関心が育っている途中なのか。
理由が見えてくれば、必要な関わり方も考えやすくなります。分からないまま「もっと頑張って」と声をかけるより、その子が今困っていることを確かめる方が、次に何をすればよいかが見えてきます。
子どもが勉強しないときは、まずその背景を見てみることが大切です。


