自学力とは「一人で勉強する力」ではない|子どもが自分で学びを進めるために必要な力

「うちの子は、言われないと勉強しない」「自分から勉強できるようになってほしい」。こうした悩みを持つ保護者は少なくありません。
そこで考えたくなるのが、「そろそろ親が手を離した方が、自学力がつくのではないか」ということです。
しかし、自学力は、大人が手を離せば自然に育つものではありません。
この記事では、自学力を「一人で勉強する力」と考えると何がずれるのか、自学力とは具体的にどのような力なのか、そして家庭では子どものどこを見ればよいのかを整理します。
自学力を「一人で勉強する力」と考えると誤解が生まれる
自学力という言葉から、
- 誰にも聞かずに勉強する
- 一人で机に向かう
- 親や先生に頼らない
- 放っておいても勉強が進む
といった姿を思い浮かべる方もいるでしょう。
そのため、「なるべく口を出さない方がよい」「質問ばかりする子は自学力が低い」と考えてしまうことがあります。
けれども、一人で勉強していることと、自分で学習を前に進められていることは同じではありません。
一人で勉強していても、学びが進んでいるとは限らない
たとえば、方程式の問題を前にして、30分近く一人で考え続けている子がいたとします。
一見すると、粘り強く頑張っているように見えます。
しかし、もしその子が「移項」という操作の意味を理解しておらず、符号を変えるルールだけで解こうとしているのであれば、長く考えても前には進みにくいでしょう。
この場合に必要なのは、「もっと自分で考えなさい」と待ち続けることではありません。
両辺に同じ操作をするという方程式の基本的な考え方を教え、そのうえで次の問題を本人に考えてもらう。そうすれば、教えてもらった知識を使って、自分で学習を進められるようになります。
教えること自体が、自学力を下げるわけではありません。
大切なのは、考えるために必要な材料があるかどうかです。
「一人で長時間粘っていること」を無条件に評価するのではなく、その時間によって実際に学習が前へ進んでいるかを見る必要があります。
質問することは、自学力がない証拠ではない
質問についても同じです。
たとえば、文章題をほとんど読まず、数秒で「分かりません」と聞く場合があります。
この段階では、答えを説明するよりも、
「まず問題文を最後まで読んでみよう」
「分かっている数字を書き出してみよう」
「図にできないかな」
と、本人が自分でできる部分は、できるだけ自分で取り組ませた方がよいでしょう。
一方で、自分で問題を解き、解説も読んだうえで、
「ここまでは分かるけれど、この部分だけ理由が分からない」
と質問する場合もあります。
この場合は、分からないところを自分で特定したうえで、必要なときに助けを求めています。そこを説明してもらうことは、自学力がないからではありません。
同じ「質問する」という行動でも、その中身は大きく異なります。
問題なのは質問することではなく、自分で考えられるところまで考えず、最初から答えを受け取ることが習慣になることです。
必要なときに適切な助けを求めることも、自分の学習を前に進めるための大切な力です。
自学力とは、自分の学習を自分で前に進める力
自学力とは、誰にも頼らず、何でも一人でできる力ではありません。
必要なときには周囲の力も借りながら、自分で考え、自分の学習を進めていく力だと考えると分かりやすくなります。
学習が止まる場所は、子どもによって違います。
なかなか始められない子もいれば、始めてもすぐ答えを見る子もいます。考えてはいるものの、どこで分からなくなったのか自分では把握できない子もいます。間違えたあと、答えを書き直すだけで終わり、次の学習へつなげられない場合もあります。
自学力を単純に「ある・ない」で判断するのではなく、どの段階で学習が止まっているのかを見ることが大切です。
自学力を6つの側面から考えてみる
自学力の中身を理解しやすくするため、ここでは学習を前に進める過程を6つに分けて考えてみます。
1.必要な学習を始める力
最初は、学習に取りかかることです。
「やる気が出たら始める」のではなく、必要なことが分かれば、まず動き始める。
そのためには、「何をすればよいのか」が本人の中で整理されている必要があります。
たとえば、翌日に学校の漢字テストがあるなら、まず何から取り組むのかを自分で決める。最初から完璧な計画を立てる必要はありません。
「まずこれをやる」と自分で一つ決められることが、学習を前へ進める第一歩です。
2.自分で考え、試す力
問題が分からないときに、すぐ答えを見るのではなく、自分でできることを試します。
図を描く。表にする。小さな数字で試す。似た問題を振り返る。習ったことを思い出す。
考えるとは、ただ長時間悩むことではありません。
持っている知識や方法を使いながら、いくつかの手を試してみることです。
3.どこでつまずいているかを把握する力
「分からない」と感じたときに、何が分からないのかを少しずつ具体化できることも重要です。
- 問題文の意味が分からない
- 必要な公式を忘れている
- 途中までは分かるが、その先が分からない
- 計算方法でつまずいている
- 解説のある一文だけ理解できない
この違いが分かれば、次に何をすればよいのかも変わります。
最初は、大人が「ここまでは分かる?」「その次は?」と一緒に境目を探しても構いません。
そうした経験を重ねることで、少しずつ自分でつまずきを見つけられるようになります。
4.必要なときに助けを求める力
どこで困っているのか分かったら、必要な助けを使います。
教科書や解説を読む。前の単元へ戻る。辞書や資料で調べる。先生に質問する。
こうした行動も、自学の一部です。
「自分で学ぶのだから、人に聞いてはいけない」と考える必要はありません。
むしろ、自分だけでは解決できない状態を把握し、そのまま放置せず、適切な助けを選べることは重要です。
ただし、何も試さずに毎回答えを聞くこととは区別する必要があります。
5.結果を振り返る力
問題を解いたあと、正解か不正解かを見るだけでは、学習はそこで止まってしまいます。
なぜ間違えたのか。
知識が足りなかったのか。問題文を読み違えたのか。計算方法が不安定なのか。考え方そのものが違っていたのか。
たとえば、本人は「計算ミス」と思っていても、確認してみると、以前に習った分数計算そのものが十分に身についていないことがあります。
大切なのは、間違いを責めることではありません。
間違いを、次に何を学ぶべきかを知る材料にすることです。
6.方法を修正する力
原因が分かったら、次の行動を変えます。
基礎問題へ戻る。問題数を減らして理解を優先する。覚え方を変える。質問する。計画を立て直す。
学年より前の内容へ戻る必要があることもあります。
「今はここへ戻った方がよい」と判断できることは、決して後退ではありません。
大人がいくつかの選択肢を示す必要がある場合もあります。その中から本人が選び、実行し、結果を見てまた調整する。
この繰り返しによって、自分の学習を自分で動かせる範囲が広がっていきます。
自学力は、最初から一人で任せることで育つのではない
「自学力をつけたいから、なるべく口を出さない」という考え方があります。
もちろん、大人が何でも先回りしてしまえば、子どもが考える機会は減ってしまいます。
一方で、方法を知らない子に最初からすべてを任せても、自学力が育つとは限りません。
必要な知識がないとき、間違って理解しているとき、自分だけでは気づきにくい考え方が必要なときには、きちんと教えた方がよい場面があります。
問題なのは、教えることではありません。
本人が考えられるところまで大人が代わりに考え、本人が決められることまで大人が決め続けることです。
必要なことを教えたら、次は本人に試してもらう。
難しければ再び手を貸し、できるようになったことは、少しずつ自分でやらせる。
自学力は、このように必要なときには周囲の力も借りながら、自分でできることを少しずつ増やしていく中で育っていきます。
自学と放任は何が違うのか
自学と放任は、表面だけを見ると似て見えることがあります。
どちらも、大人が横から細かく指示していないからです。
しかし、中身は違います。
放任では、子どもが何をすればよいのか分からなくても、困っていても、その状態が把握されないまま本人に任されることがあります。
自学を育てる場面では、必要な知識や方法、学習環境は整えます。そのうえで、本人ができる判断や作業まで大人が奪わないようにします。
たとえば、学習内容を振り返ったうえで、
「今週はどこをもう一度やった方がよさそう?」
と本人に考えてもらう。
必要なら、
「計算に戻る方法と、今の単元をもう一度やる方法があるけれど、どう思う?」
と選択肢を示す。
こうした関わり方なら、必要なところでは手を貸しながら、自分で判断できることは本人に考えさせることができます。
「全部こちらで決める」のでも、「何も言わずに任せる」のでもありません。
子どもに任せながら必要なところで手を貸すには、子どもの状態を見て、どこまで助けるかを調整する必要があります。大人にとっても、単純な関わり方ではありません。
自学力がある子は、すべてを一人でできる子ではない
自分で学習を進められる子は、何でも一人で解決するとは限りません。
むしろ、
「これは自分で調べれば分かる」
「ここは解説を読んでも分からない」
「この部分だけ先生に聞いた方が早い」
と、自分で判断できるようになっていきます。
分からない問題すべてを人に聞くのでもなく、何時間でも一人で抱え込むのでもありません。
何を自分で処理し、どこで助けを借りるかを選べることも、自学力の一部です。
一人で完結することだけを自立と考えると、この大切な力が見えにくくなります。
親が見るべきなのは「一人でできたか」ではなく「自分で前に進めたか」
家庭では、学年が上がるほど、保護者が学習内容そのものを細かく確認するのは難しくなっていきます。
だからこそ、「今日は一人でできたか」だけで判断する必要はありません。
たとえば、次のような点を見ることができます。
- 何をすべきか本人なりに分かっていたか
- 昨日と同じところで止まったままではなく、何か試したか
- 「分からない」の中身を少しでも言葉にできたか
- 必要なときに、自分から助けを求められたか
- 間違えたあと、そのままにせず何か手を打ったか
- うまくいかなかった方法を変えようとしたか
誰かに聞いて解決したとしても、自分で「聞く必要がある」と判断して前へ進めたのであれば、それも学習の一部です。
大人がどこまで手を貸すかは、年齢、理解度、経験、教科、取り組んでいる教材の難しさによって変わります。
手助けを少なくすること自体が目的なのではありません。
できるところまで大人が代わりにやってしまわず、子どもが自分で考える機会を奪わないことが大切です。
まとめ
自学力を「一人で勉強する力」と考えてしまうと、質問する子は自学力が低く、誰にも聞かず長時間考え続ける子は自学力が高い、という見方になりかねません。
けれども、本当に大切なのは、一人でやったかどうかではありません。
必要な学習を始める。自分で考えて試す。どこでつまずいたのかを把握する。必要なら助けを求める。結果を振り返り、次の方法を修正する。
こうした一連の流れを、自分で少しずつ回せるようになることが自学力です。
もちろん、最初からすべてを一人でできる必要はありません。
必要なときには周囲の力も借りながら、自分で考え、選び、修正できることを少しずつ増やしていけばよいのです。
お子さんの学習を見るとき、
「今日は一人でできたか」
ではなく、
「今日は、自分でわからないところを整理し、必要な助けも借りながら学習を進められたか」
という視点で見てみてください。
自学力の見え方が、少し変わってくるはずです。
FAQ
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