子どもの学びを深めるために大切なこと:公式よりも「概念理解」の育て方
子どもの勉強で「公式を覚えさせるだけ」で終わっていませんか?実は、算数や数学で重要なのは「概念」を理解し、実感として身につけることです。この記事では、子どもの成長と学びを深めるために必要な「概念理解」の大切さについて、具体的な事例を交えながらお伝えします。
主体的な経験が「考える力」を育てる
子どもが何かに取り組むとき、失敗しながらも自分で考えて工夫することが「考える力」を育てるポイントです。親がすべて手順を教え込んだり、答えを与えたりするのではなく、子ども自身が試行錯誤する機会を作ることが大切です。
以下に、ある小学4年生の女の子の作文を引用してご紹介します。
ーそれから、水を全部抜かないで、下から十センチメートルほど残して、スポンジにあわをつけて洗います。私はほんとうにしっかりこすりました。だって、ときどきかべをこするとあかがとれる時があるからです。しっかりしっかりあらったら、残しておいた水でスポンジをあらうのです。そのあらい方を思いついた時、「私って頭いいなあ。」と自分で思ったときもありました。それから、かべについたあわをシャワーで流します。流したらあらうのは終わりです。それから、お湯の入れ方は水を2回ひねって、お湯を全開にします。それから「もう満タンやなあ。」と思ったら、水を止めに行くとバッチグーです。
この子は、お風呂掃除をする中で自分なりの工夫を発見しました。最初はやり方がわからず、うまくいかなかったものの、次第に「水を少し残してスポンジを洗う」という効率的な方法を見つけたのです。
このように、子どもが主体的に考え、工夫することで「自分でできた!」という達成感や自信を感じられます。これは、勉強にも共通する大事な経験です。
大人が手を出しすぎず、子どものペースで取り組ませると、自然と「もっと上手になりたい」「次はこうやってみよう」と考えるようになります。こうした主体的な経験が、子どもの成長には欠かせません。
また、失敗することも重要な学びの一つです。間違えたときに「どうすればうまくいくのか?」と考える習慣がつくことで、子どもの思考力や工夫する力が育まれます。
主体的に取り組む経験を積み重ねることで、子どもは学びの楽しさに気づき、自ら進んで学ぶ姿勢を身につけていくのです。
公式だけ覚えても「本当の学び」にはならない
勉強で「公式さえ覚えれば大丈夫」と考えていませんか? しかし、公式や手順をただ暗記するだけでは、子どもは本当の意味で学びを理解できません。
例えば、算数の問題で「公式に当てはめれば解ける」と教えられた子どもは、問題が少し変わると手が止まってしまうことがあります。それは、公式の意味や仕組みがわかっていないからです。表面的な答えを出すことが目的になり、問題を「理解する力」や「考える力」が育たないのです。
ある実例として、水を異なる形の容器に移す実験があります。低学年の子どもは、細長い容器に水を移すと「水が増えた!」と感じることがあります。これは、目に見える水面の高さだけを基準にして判断してしまうためです。
また、食塩を水に溶かすと「食塩は消えた」と答える子どももいます。「食塩の重さ+水の重さ=食塩水の重さ」という考え方が理解できていないのです。
こうした子どもたちに公式や計算方法だけを教え込んでも、根本の「概念理解」が追いついていないため、問題の本質を理解することができません。その結果、算数が「ただの暗記科目」になってしまい、長い間苦手意識を抱える原因にもなります。
「なぜそうなるのか?」 を一緒に考えることが、子どもの学びを深める鍵です。公式はあくまで「道具」です。その道具を正しく使えるようにするためには、前提となる「概念理解」が欠かせません。
例えば、「面積を求める公式」を教える前に、子ども自身に正方形や長方形の形を使って「広さ」を考えさせる体験をすることで、公式の意味を実感として理解できるようになります。
ただの暗記ではなく、「考えて理解する学び」ができるようになると、子どもは算数や数学を楽しく感じるようになります。公式はあくまで結果として自然に身につくものであり、「理解」から始める学びこそが、子どもの力を本当に伸ばすのです。
なぜ子どもたちは「水が増えた」と感じるのか?
子どもは、目に見えるものに大きく影響されます。例えば、水をコップから細長い容器に移すと、「水が増えた!」と感じる子が少なくありません。これは「水の量は変わらない」という保存の概念がまだ理解できていないからです。
同じように、食塩を水に溶かす実験でも、「食塩は溶けて消えた」と答える子どもがいます。これは「食塩が水に溶けても重さは変わらない」という加法の概念が身についていないためです。見た目の変化に惑わされて、本質を捉えられていないのです。
こういった現象は、算数や理科の学びの中でよく見られます。高学年になると、「食塩水の濃度を求める」問題が出てきますが、概念が理解できていない子どもは公式を使うことだけに集中します。その結果、間違えてしまったときに「どうして間違えたのか?」がわからないまま終わってしまいます。
見た目だけで判断してしまう理由
子どもは「経験」と「実感」を通して物事を理解します。しかし、まだ経験が少ない子どもたちは、目に見える部分だけで判断しがちです。
- 水面の高さ=水の量 と考えてしまう。
- 食塩が見えない=消えた と思ってしまう。
こうした考え方は自然なもので、無理に否定する必要はありません。大切なのは、子どもが自分で気づく体験を通して概念を理解していくことです。
気づきの体験が概念を育てる
例えば、水を異なる容器に移す実験を繰り返すことで、「形が変わっても水の量は同じ」ということに子ども自身が気づく瞬間があります。
食塩を水に溶かした後、重さを測ることで「食塩は見えなくても重さは変わらない」という事実に驚くかもしれません。こういった体験を重ねることで、子どもは「保存の概念」や「加法の概念」を実感として理解できるようになります。
目に見える現象に惑わされず、「どうしてそうなるの?」と考える習慣が、学びの本質を捉える力を育てます。親や教師は、子どもが自分で気づけるよう、問いかけたり実験を一緒に楽しんだりすることが大切です。
こうした概念の理解が深まると、子どもは算数や理科が「面白い!」と感じるようになります。そして、公式やテクニックを使う前に「なぜそうなるのか?」を自然と考える習慣が身についていくのです。
遊びの中で育つ数学の概念理解
子どもが「学びの土台」となる概念を理解するには、日常の遊びが大きな役割を果たします。算数や数学の基本的な考え方は、学校の授業やテストの中だけで身につくものではなく、遊びや生活体験を通じて自然に形成されるものだからです。
例えば、次のような遊びが数学の「概念理解」を育てます:
- 水遊び
バケツやコップなど、形の異なる容器に水を移し替えることで、「量は変わらない」という保存の概念を体感します。見た目に惑わされず、「水は増えたり減ったりしていない」と気づくことで、後の算数学習に繋がる基礎が育ちます。 - 砂遊びや粘土遊び
砂や粘土を使って形を変えながら遊ぶことで、「重さや体積は形が変わっても変わらない」という感覚を養います。また、粘土を分けたりくっつけたりすることで、数の「合成」や「分解」の概念が自然に身についていきます。 - ブロック遊び
ブロックを組み立てたり分解したりする中で、数の構成や順序、立体の構造について理解が深まります。例えば、「同じ大きさのブロックを組み合わせるともっと大きな形になる」といった経験が、数学の加法や面積・体積の理解に繋がります。
「学び」と「遊び」の関係
こういった遊びは一見勉強とは関係ないように見えますが、実は子どもの中に「数学的な概念」を自然に育てる大切な時間です。遊びの中で手や体を使い、実際に見て触れることで、子どもは「実感」を伴って理解を深めます。
例えば、「数」を教えるときにブロックやおはじきなどを使うと、子どもは「1つ増える」「2つに分ける」といった操作を通して、数の概念を理解しやすくなります。これが、単なる数字や公式の暗記ではなく、本質的な理解へとつながるのです。
遊びから算数・数学へのステップアップ
幼児期や低学年のうちは、公式や計算方法を教える前に、遊びを通して「なぜ?」を考える機会を増やしましょう。例えば:
- 水遊びで量を比べる:「このコップとバケツ、どっちがたくさん入るかな?」
- 粘土遊びで形を変える:「形が変わっても、粘土の量は同じだよね。」
- ブロックで数を学ぶ:「3つのブロックを2つに分けたら、1つと2つになるね。」
こういった日常の遊びの中で、子どもは自然と数学的な考え方を身につけていきます。そして、これらの体験が、後に学校で習う算数や数学の学びにスムーズにつながるのです。
親子で一緒に楽しむことが大切
遊びを通して概念を理解するためには、親が一緒に楽しむ姿勢も大切です。
「なんでそうなるのかな?」「こうやったらどうなると思う?」と、子どもと一緒に考えたり、実際に試してみることで、子どもの好奇心や探究心が育まれます。
算数や数学は、ただ数字や公式を覚えるだけではなく、「理解して楽しむ」ことが何より重要です。遊びの中で育った概念理解は、子どもの中でしっかりと根を張り、後の学びを支える強い土台になるのです。
算数・数学が好きになる子どもを育てるために
子どもが算数や数学を好きになるためには、公式や答えを覚える前に「なぜそうなるのか?」を考える習慣を身につけることが大切です。ただ暗記して答えを出すだけでは、学びの楽しさを感じられず、興味を失ってしまうことが多いからです。
算数が苦手になってしまう子どもの多くは、問題の意味や仕組みがわからないまま、計算や公式だけを詰め込んでしまうことが原因です。「何をやっているのか理解できない」状態では、勉強は単なる作業になり、長続きしません。
「考える楽しさ」を教える工夫
子どもに算数や数学を楽しく感じてもらうためには、次のような工夫が効果的です:
- 疑問を持たせる
例えば「水を移し替えたら量は増えるのかな?」「なぜ粘土の形が変わっても重さは同じなの?」といった疑問を投げかけることで、子ども自身が考えるきっかけを作ります。 - 体験を通じて学ぶ
計算や公式の説明だけでなく、実験や遊びを通して「実感」を伴った学びを提供します。水の量を比べたり、重さを測ったりすることで、公式が導かれる理由を理解しやすくなります。 - 失敗を歓迎する
間違えても大丈夫!と伝え、「どうすればうまくいくのか?」を一緒に考える姿勢が重要です。失敗から学ぶことで、子どもは自分で解決する力や粘り強さを身につけます。
概念理解が公式を「使える力」に変える
公式は学びのゴールではなく、あくまで「道具」です。例えば、面積を求める公式「たて×よこ」をただ暗記させるのではなく、正方形や長方形を組み合わせて「広さ」を体感しながら理解することが大切です。
概念を理解すると、公式がただの暗記ではなく「使える知識」に変わります。応用問題や新しい場面でも「どうしてそうなるのか?」を考える力が育ち、学びの幅が広がるのです。
親子で一緒に学びの楽しさを共有する
算数や数学を好きになってもらうためには、親も一緒に「考える楽しさ」を共有することが大切です。
「どうしてそうなるんだろう?」「こうやったらどうなるかな?」と問いかけ、子どもと一緒に考える時間を持つことで、学びが楽しいものに変わります。
また、「よく考えたね!」「自分で気づけたね!」と子どもの努力や気づきをしっかり褒めることも忘れずに。自信がつくことで、「もっと考えたい」「もっと知りたい」 という意欲が育ちます。
まとめ:考える力が未来を支える
子どもが算数や数学を楽しいと感じ、自分から学ぶ姿勢を育てるには、公式や答えを教える前に「なぜ?」を考える機会を大切にしましょう。遊びや日常生活を通して概念を理解し、自分で気づく経験を積み重ねることで、算数は「楽しい学び」に変わります。
「考える力」を育てることが、子どもの学びの土台をしっかりと支え、将来の学びや生活にも大きな力となっていくのです。