AI時代に「考える力」を失う子どもたち 努力しても伸びない本当の理由

最近、どれだけ勉強しても思うように成績が伸びない――そう感じる保護者の方が増えています。
子どもが「やる気はある」のに結果が出ないとき、原因は「勉強時間の不足」ではなく、“考える力”の欠如にあります。
スマホやAIが発達した今の時代、知識を覚えるだけの勉強はすぐに限界を迎えます。
この記事では、AI時代に失われつつある「考える学び」と、それを取り戻すための具体的な方法をお伝えします。
「考える前に答えを探す」子が増えている
サンライズでも、ここ数年で明らかに変化を感じます。
分からない問題に出会ったとき、すぐにスマホで検索する子。
タブレットの辞書アプリに答えを打ち込む子。
中には、AIに「この問題の解き方を教えて」と聞いてしまう子もいます。
もちろん、調べること自体は悪いことではありません。
ただ問題は、「考える前に調べてしまう」という順番の崩れです。
考える時間を飛ばしてしまうと、頭の中に「なぜそうなるのか」という筋道が残りません。
表面的な知識だけが積み重なり、テストでは使えない“覚えただけの知識”になります。
それはちょうど、地図を見ずにナビの指示だけで運転しているようなものです。
道順を覚えることはできず、「次にどうすればいいか」を常に誰かに頼る状態。
学習においても、今まさに同じことが起こっています。
「努力しているのに伸びない」理由は“思考の空洞化”
最近、保護者からよくこんな声を聞きます。
「毎日机に向かっているのに、成績が上がらない」
「テキストを2周も3周もしたのに、テストではミスが多い」
このような子に共通しているのは、「考えた痕跡がノートにない」ことです。
途中式がほとんどなく、答えだけが整然と並んでいる。
つまり、「考える過程」を経ずに、正解を写す学び方をしているのです。
塾の授業でも、「この問題、どう考えた?」と尋ねると、
「えっと、前にやったときにこう書いてたので……」と答える子がいます。
思考の裏付けがなく、ただ形だけを再現している状態です。
努力しても伸びないのは、能力の問題ではありません。
努力の中身が“考える練習”になっていないからです。
「やり方をなぞる」ことが勉強になってしまっている限り、いくら時間をかけても結果は変わりません。
AIが“答えを出してくれる時代”の落とし穴
生成AIの登場によって、勉強の形は大きく変わり始めています。
AIは驚くほど正確に、しかも分かりやすく答えを示してくれます。
しかし、その便利さの裏で、「自分で考える機会」が急速に減っています。
最近の子どもたちは、分からない単語や文章をChatGPTや翻訳アプリに入れて、
すぐに意味を調べてしまうことがあります。
一見すると効率的ですが、その瞬間に「考える力のスイッチ」が切れてしまうのです。
本来、英語の勉強は単語を訳すことではなく、
「なぜこの単語がここに来るのか」「この表現で伝わるニュアンスは何か」を考えることに意味があります。
ところがAIを使うと、“なぜ”を考える過程をすべてスキップしてしまいます。
勉強の目的は「答えを出すこと」ではなく、
「答えが出るまでの過程で思考を鍛えること」です。
この目的を忘れてしまうと、どれだけAIを使っても成績は上がりません。
「考える学び」を失わせるもう一つの要因 ― “過保護な教材”
近年の参考書や教材は、どれも非常に親切です。
重要語句には最初からマーカーが引かれ、
「ここを覚えよう!」というまとめページまで用意されています。
一見、分かりやすくて良い教材ですが、
子どもが「自分で大事なところを探す経験」をしなくなってしまいました。
たとえば、昔の教科書には余白が多く、自分で線を引いたり書き込んだりする余地がありました。
しかし今は、最初から「正しい答え」が色つきで示されています。
つまり、「ここが重要だ」と“考える余白”が奪われているのです。
勉強の本質は、「何が大事かを見つける力」にあります。
それを最初から“提示される”環境では、考える力は育ちません。
便利すぎる教材ほど、「思考の余地」を削ってしまうという paradox(逆説)があるのです。
成績を伸ばす子は「答え」より「プロセス」を見ている
サンライズで伸びる子には、共通点があります。
それは、「自分の間違いを分析する力」を持っていることです。
間違えたらすぐに答えを見るのではなく、
「なぜ間違えたのか」「次はどうすれば防げるか」を考えます。
間違いノートに、思考の流れを言葉で残す子もいます。
「ここで分数を小数に変え忘れた」「設問の条件を読み飛ばした」など、
自分の思考のクセを分析する子ほど、成績は確実に伸びていきます。
これは、正解を探す勉強ではなく、思考を磨く勉強です。
この違いを理解できるかどうかが、AI時代における学力の分かれ道になります。
成績を伸ばす子ほど、自分の間違いから学び、思考のプロセスを重視しています。
家庭でその力を育てるための方法については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
→ 子どもの自学力を育てる方法|親ができることと家庭での実践
親ができる「考える力」を育てる関わり方
保護者の方も、「考える力」を奪わない関わり方が大切です。
子どもが分からないと言ったとき、すぐに答えを教えるのではなく、
「どうしてそう思ったの?」「ほかのやり方はあるかな?」と問いかけてみてください。
大人が“考える手助け”をすることで、子どもは自分の頭で整理する習慣を身につけます。
この「考えさせる関わり方」は、家庭でも塾でも共通して重要です。
また、家庭学習では「今日何をしたか」よりも、
「今日どんな発見があったか」を聞いてあげると良いでしょう。
勉強が“報告”ではなく“思考の共有”になると、子どものやる気が持続します。
親が「教える」ではなく「考えさせる」関わり方をすることで、子どもの思考力は確実に伸びます。
論理的に考える力の育て方については、こちらの記事も参考になります。
→ 子どもの未来を切り拓く鍵:論理的思考力の基礎とその育成法
AI時代の学びに必要なのは“自学力”
AIが進化するほど、「自学力」の価値は高まります。
AIは知識を与えることはできますが、
その知識をどのように使うかまでは教えてくれません。
最終的に必要なのは、
「自分の頭で考え、自分の言葉で説明できる力」。
それこそが、AIには決して置き換えられない人間の強みです。
サンライズでは、宿題のやり方や学習スケジュールも含め、
“自分で考える力”を育てる指導を大切にしています。
勉強の目的は「教わること」ではなく「自分で考える力を伸ばすこと」。
AIがどれだけ進化しても、この本質は変わりません。
すぐに答えを求めず、地道に考え続ける経験こそが、将来の大きな力になります。
サンライズが大切にしている「先苦後楽の学び方」については、こちらの記事をご覧ください。
→ 先苦後楽:今の努力が未来を変える
「考える時間」を取り戻そう
AIが答えを出してくれる時代、
「わからない」を感じる時間がどんどん短くなっています。
けれど、その“わからない時間”こそが、子どもの成長を生む時間です。
すぐに答えを知るよりも、「なぜ?」を考える時間を増やす。
それが、これからの時代に必要な学びの形です。
子どもたちが「考えること」を楽しめるように――
その環境をつくるのは、私たち大人の役目です。
よくある質問(FAQ)
AIを使って勉強するのは悪いことですか?
悪いことではありません。問題は「考える前に答えを見る」使い方です。
AIは調べた後の“自分の考えの整理”や“別解の比較”に使うのが効果的です。まずは手を動かして考える→AIで検証の順番にしましょう。
家庭で“考える力”を育てるには、何から始めればよいですか?
すぐに答えを教えず、理由を言語化させる質問を増やします。
「なぜそう思った?」「ほかのやり方は?」「次に注意する点は?」など、思考プロセスへの問いかけが効果的です。
努力しても結果が出ない子には、どんな声かけが有効ですか?
結果より“過程の変化”を承認します。
「前より説明が筋道立ってきたね」「ミスの原因を書けたのが良いね」など、分析や再現の力を評価しましょう。
宿題でAIをどこまで使ってよいか、線引きはありますか?
学校・教科の方針を確認し、“途中の考え”は必ず自分で残すことを徹底します。
途中式・根拠・比較をノートに記録し、AI出力は参考として自分の言葉で書き直すのが基本です。
「考える時間」を確保するための家庭ルールは?
学習開始時刻の固定+スマホを別室+学習後3分の振り返りが効果的です。
毎回「今日の発見/次の改善」を1行で書かせると、自学力が安定して伸びます。
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